最終更新日: 2023/2/7
13桁と8桁の2バージョン
「バーコードの種類」の項でも説明したように、JAN(Japan Article Number)コードには、13桁の標準バージョンと8桁の短縮バージョンがあり、 後者はシンボルをマーキングする面積が少ない小さな商品などに使用されます。いずれも下図のように「国コード」「企業(メーカー)コード」 「商品アイテムコード」「チェックデジット」で構成されています。
国コード
最初の2桁または3桁が国コードで、日本には「49」と「45」が割り当てられています。 EAN(European Article Number)加盟国の国コードはコチラをご覧ください。
企業(メーカー)コード
国コードの次の7桁(短縮バージョンは4桁)の数字が企業(メーカー)コードです。
(財)物流システムセンターが一元的に付番管理しており、 JANコードを使用する時は同センターに登録申請し、個別の企業(メーカー)コードを取得する必要があります。
2001年(平成13)1月1日以降に取得した企業は7桁、それ以前に取得した企業は5桁が混在しています。7桁の場合は999アイテムまで利用できますが、 アイテム数がそれ以上の場合は新しい企業(メーカー)コードを追加して使用します。
商品アイテムコード
企業(メーカー)コードに続く3桁(短縮バージョンは1桁)の数字で、企業(メーカー)コードを取得した事業者等が、自由に設定することができます。 商品が異なる場合はもちろんのこと、同一商品でも色やサイズが異なれば、それぞれ独立した番号をつけなければいけません。
なお、企業(メーカー)コードが5桁の商品アイテムコードは5桁です。
チェックデジット
バーコードの正確性を保つために付けられる数値で、コード番号の末尾1桁の数字です。
「モジュラス10ウェイト3」と呼ばれる特殊な計算式によって算出されます。
JANコードは、チェックデジットを含めてJIS化されているので、チェックデジットの有無による誤読の比較確認はできませんが、 他のバーコードではいくつかの実験が行われています。
米国防総省が行った「CODE39」の実験では、 チェックデジットを付けない場合の誤読が約300万字に1字だったのに対し、チェックデジットを付けると約1億4900万字に1字と激減しました。
チェックデジットの計算方法はコチラをご覧ください。
企業(メーカー)コードの変更
従来、標準バージョンの企業(メーカー)コードは5桁でしたが、2001年1月1日から原則として7桁に変更され、現在は5桁と7桁が混在しています。 同時に商品アイテムコードは、5桁から3桁に変更されました。
これは、EANコード(日本ではJANコード)を使用する事業者の増加に対応し、将来にわたってEANコードを有効的に利用するために行われました。
商品アイテムコードが5桁なら10万アイテムに利用できますが、実際に使用されているアイテム数は100以下の企業が大半を占めているため、 商品アイテムコードを3桁にして2桁を企業(メーカー)コードに振り分けました。これによって、日本のバーコード不足の心配は解消されました。
なお、短縮バージョンについては、変更はありません。
「12桁」で「13桁」を表現
バーコードをよく見ると、左右と中央のバーが他のバーより長くなっています。業界では通称「ひげ有り」と呼んでいますが、 正式には左端のバーを「レフトガードバー」、右端のバーを「ライトガードバー」と呼びます。中央のバーは「センターバー」です。
左右のガードバーは、スキャナーで読み取る際にバーコードの「始まり」と「終わり」を認識するためのもので、 いずれも3モジュールです。センターバーは5モジュールです。
レフトガードバーとセンターバーの間に6桁、 センターバーとライトガードバーの間にも6桁の内容が入っています。合わせて12桁の数字が 「データキャラクタ」です。
「あれ、JANコードの標準バージョンは13桁のはずだが?」と疑問に思われるかも知れませんが、実はこんなカラクリがあるのです。
米国・カナダで使用されていたUPCコード(Universal Product Code)は12桁のバーコードで、国という概念はなく 1桁目は食品や医薬品などの分類表示に使われていました。
しかし、EANコードは国の概念を入れるために 1桁増やす必要に迫られました。
ただし、単純に1桁増やしただけではUPCコードから逸脱してしまいます。
そこで考え出されたのが、12桁で13桁を表現する方法です。
つまり、新たに加えた先頭の1桁(付加文字=プリフィックスキャラクタ)をキャラクタ(数字)で表すのではなく、 12キャラクタの左半分の6キャラクタを使って表すという方法です。日本の国番号は「49」と「45」ですが、 先頭の「4」を「A・B・A・A・B・B」という組み合わせで表し、左半分の12桁を表現することによって、 12キャラクタのままで13桁を表現できるようにしました。
JAN-OCR併記タイプ
JANコードには通常のタイプとは別に、バーコード部分と数字部分の両方の読み取りが可能な「JAN-OCR併記タイプ」があります。
図(1)と図(2)を見比べて分かるように、図(2)は数字の先頭に「T」(短縮バージョンはF)というアルファベットが付されており、 数字自体もバーコードから少し離れて表示されています。
これが「OCR-Bフォント」と呼ばれているもので、 先頭のアルファベットの「T」は、標準バージョンであることをスキャナー=コンピューターに伝える識別コードです。
現在、ほとんどのレジではバーコード部分のみを読み取るようになっていますが、数字部分も認識するスキャナーもあり、 そのようなレジで運用可能なのがJAN-OCR併記タイプです。
スポーツ用品・玩具・電気製品業界などで使用が定められています。
寸法特性
バーコードの基本モジュール幅は0.33mmで、0.8倍の0.26mmから2.0倍の0.66mmまで縮小拡大が認められています。
シンボルの高さは、1モジュールが0.33mmのとき、標準バージョンでは22.86mm、短縮バージョンでは18.23mmです。 モジュール幅の拡大率、縮小率に比例して、高さも拡大縮小されます。
標準バージョンでシンボルを縮小拡大しないタイプを「JAN100%(標準サイズ)」、 0.8倍縮小したタイプを「JAN80%(縮小サイズ)」と呼ぶこともあります。
フィルムマスター(バーコードの原版)を使って拡大縮小する場合は問題ありませんが、 その他の方法で表示(印刷)する場合は、モジュール幅が正しく反映されているかどうかが重要になってきます。 様々なバーコードプリンターが開発・販売されており、いずれもJANコードのJIS規格に収まるよう設計されているのでほとんど問題はありませんが、 一般的なコンピューター用プリンターでバーコードを出力する際は注意が必要です。
例えそのプリンターで読み取り可能なバーコードの縮小拡大が設定できたとしても、バーコードの各部寸法の許容誤差を確認する必要があります。 バーコードの印刷は複数の要素が複雑に絡まっており、バーの「太り」や「細り」が生じます。 そのためJISでは厳格な許容誤差が定められています。
バーコードのJIS規格については、日本工業標準調査会(http://www.jisc.go.jp/)でJIS検索サービスを行っています。 「JIS-X0507」を入力すると閲覧できます。
光学的特性
JANコードは黒色のバーと白地のスペースによって成り立っていますが、この黒と白をどう認識できるかがバーコードの生命線と言っても良いでしょう。 この光学的な特性には反射率、反射濃度、PCS値の3要素があり、これらの条件を満たす必要があります。
白バー(スペース)の反射率や反射濃度に対する黒バーの最大反射率と最小反射濃度は、下表(反射率・反射濃度とPSC値)の範囲を保つ必要があります。
反射率はMRD(Minimum Reflectance Difference) 値で表されます。
計算式は、「Rlmin(スペースの最小反射率)-Rdmax(バーの最大反射率)」によって求められます。 AIM(国際自動認識工業会)では、(X)の幅により、MRD≧37.5%(X<1.02mm)、MRD≧20%(X≧1.02mm) と規定しています。また、スペースのRlminとRdmaxについても規定しており、Rlmin≧25%、Rdmax≧30%となっています。
PCS値(Print Contrast Signal)はシンボルのコントラストを表わす値です。
計算式は「PCS値=RL-RD/RL」で、 RL は白バー及びマージンの反射率、RDは黒バーの反射率を表します。 ANSI(米国標準規格協会)ではPCS値は、75%以上あることを求めています。JISでも 下表(反射率・反射濃度とPSC値)のように定めています。
光学的特性を満たしていることが前提であれば、黒以外のバーコードも読み取り可能です。実際、市場には黒以外で印刷されたバーコードも見られます。
ただし、反射率などを計測する際の光源には、He-Neレーザーの波長と同じ633nmの赤色光線を使っていますので、 印刷色については注意する必要があります。
更に、読み取り機器には半導体レーザーやLEDを使う場合もあり、 光学的特性を満たしていても633nmより長い波長の光で読み取ると、読み取り不良の可能性がありますので、 白の地色と黒色のバーの組み合わせでバーコードを作成するのがベストです。
【反射率・反射濃度とPCS値 】
白バー及びマージン |
黒バー |
最小PCS値 |
反射率% |
反射濃度 |
最大反射率 |
最小反射濃度 |
100.0 |
0 |
50.1 |
0.300 |
0.499 |
94.4 |
0.025 |
43.1 |
0.365 |
0.543 |
89.1 |
0.050 |
37.1 |
0.430 |
0.583 |
84.1 |
0.075 |
32.0 |
0.495 |
0.619 |
79.4 |
0.100 |
27.6 |
0.560 |
0.653 |
74.9 |
0.125 |
23.7 |
0.625 |
0.683 |
70.8 |
0.150 |
20.4 |
0.690 |
0.712 |
66.8 |
0.175 |
17.6 |
0.755 |
0.737 |
63.1 |
0.200 |
15.1 |
0.820 |
0.760 |
56.2 |
0.250 |
11.2 |
0.950 |
0.801 |
53.1 |
0.275 |
9.6 |
1.015 |
0.818 |
50.1 |
0.300 |
8.3 |
1.080 |
0.834 |
47.3 |
0.325 |
7.2 |
1.145 |
0.849 |
44.7 |
0.350 |
6.2 |
1.210 |
0.862 |
42.2 |
0.375 |
5.3 |
1.275 |
0.874 |
39.9 |
0.400 |
4.6 |
1.340 |
0.886 |
37.5 |
0.425 |
3.9 |
1.405 |
0.896 |
35.5 |
0.450 |
3.4 |
1.470 |
0.904 |
33.5 |
0.475 |
2.9 |
1.535 |
0.914 |
31.6 |
0.500 |
2.5 |
1.600 |
0.921 |
人為的な読み取り障害
規格を満たしておれば読み取りに問題は無いはずですが、それ以外にも読み取りの障害になるケースがあります。 多くは人為的な要素で、少し注意すれば克服できる問題です。
ひとつは、二重包装の問題です。これは、大メーカーの大量生産品にもしばしば見かけられます。 例えば、カップ麺のカップにバーコードが印刷されていたとします。更にその上から透明フィルムで シュリンク包装を施しています。一見、問題はないように思われますが、 シュリンク包装はフィルムを収縮させて包装するので、フィルムのつなぎ目や収縮の際に発生したシワがあります。 運悪くバーコードの上につなぎ目やシワがくると、スキャナーの光線が乱反射して読み取れなくなります。
つなぎ目のこない位置にバーコードを表示すれば良いのですが、カップ麺は円形なだけに、どこにつなぎ目やシワがくるかわかりません。
この場合、包装の上からバーコードシールを貼付するのがベストですが、コスト面から二の足を踏むところです。 しかし、すでにその方法をとっているメーカーもあります。
また、小売店では店単位の売価シールをハンドラベラーなどを使って貼付することがあります。
その際にバーコードの上から貼ってしまうと、全く読むことができないので論外です。
PL法の施行以後、警告表示や取り扱い注意表示は増える一方で、 空きスペースが少ないため「やむなく」バーコード上に貼ったのかも知れません。これなどは、 メーカーサイドで売価貼付欄や空きスペースをあらかじめ設ければ、そのようなことも減少するでしょう。
次に、メーカーに直接関係のある要素について説明します。必ずしもバーコードが読めないわけではないのですが、レジで時間のかかる場合があります。
理由は、「バーコードを表示している場所がわからない」からです。それも店員の資質とも言えますが、バーコードを「誰が見てもわかる位置に表示する」 視点が欠けています。
今でこそ、バーコードは必要不可欠なものという理解は深まってきていますが、数年前までは「言われるから、 仕方なしに表示している」的な感覚の企業も見られました。
また、デザイナーもバーコードを邪魔者扱いしがちで、 目立たない場所にバーコードを表示するためレジで場所がわからず、無駄な時間を費やすという事態を招いています。メーカーとしては、 商品が売れることだけでなく「売れた時」のことも考えて、「誰が見てもわかる位置」にバーコードを表示する義務があると言っても過言ではありません。